アルドマヌツィオ(アルドゥス マヌツィウス)展示会
期間:2016年3月19日から6月19日まで。
場所:アカデミア美術館 (1階)
時間:8:15-19:15(月曜: 8:15-14:00)
印刷された書籍といえば、 アルドマヌツィオの名前がまず浮かびます。
印刷はある意味では、今のデジタル革命に比較することができます。
以前は書籍は手本で、ほんの少しの恵まれた人だけの特権でしたが、印刷によって本が普及するようになると、文化の普及もスピードを増し空間的にも広がっていきました。ルネッサンス文化の流通は、印刷された本の普及を無視しては考えれられません。
アルドマヌツィオ はローマでラテン語を学び、フェッラーラでバティスタグアリーノについてギリシャ語を学びます。1489年ヴェニスに着いた時は、ピコ デッラ ミランドラなどとも親しむ人文主義者でした。マヌッイオは、ラテン語とギリシャ語の教育の普及の重大さを主張します。
ヴェニスは、ベッサリオン枢機卿から寄付されたギリシャの古典の宝庫でもあり、マヌツィオがヴェニスに来たのは偶然ではなかったわけですが、ヴェニスで、人文主義者、エルモラオ バルバロなどの教養の深い貴族たちに会い、教養深いベニスの貴族たちのための書籍の出版を考えるようになります。
印刷者アンドレア トレザーノに会い、印刷された書籍の発行を始めますが、裏には古典に対する深い情熱がありました。
1400年の終わりぐらいから、手本が印刷された書籍に変わり始めますが、それでも、マヌツィオが印刷業を始める前までは、まだイタリア全体でも例えばギリシャ語の文法の手本は10冊ほどしかありませんでした。まずギリシャ語を学ぶには文法が大事と考えたマヌツィオは文法の本を出版します。他にも短期の間にギリシャの詩、哲学、神話などの本、ローマ時代のラテン語の古典なども多く出版し、古代文化に対する情熱は印刷本という新しい回路によって隅々まで広がっていきます。
アルドマヌツィオが出版した書籍の特徴は、新しい文献学に基づいて、過去の書籍を校正し、オリジナルに近い書籍発行を探求したことと、同時に美的に魅力的な書籍の出版を目指したことです。また、今日で言えば、一種の文庫本と言ってもいい、持ち運びの簡単な小型書籍も発明します。これが経済的にも大きな成功をもたらしますが、以前にもまして書籍の流通のスピードを増すことにもなります。展示会では、ティツィアーノやパルマ イル ヴェッキオなどの手によるこの小型本を持った貴族たちの興味深い肖像画も見ることができます。
一方、古典文化は、また自然に対する中世の考えをまったく変え、自然が理想の楽園として新しい視線で憧憬されるようになります。絵画の中でも自然はそれ以前に描かれるように単なる背景であることをやめ、深い意味を持つようになります。
ジョルジョーネの「嵐」の中の自然が神秘で生命力に満ちた爆発的なエネルギーを含んでいるのはこの新しい視線で自然が観察され描かれているからです。普段はアカデミアの上階にあるジョルジョーネの「嵐」が今ここに展示され、他にもこのころの貴族たちが家に飾ることも好むようになったアルカディア(理想郷)的な自然を描いた絵がいくつか集められています。
アルド マヌツィオの素晴らしい書籍だけではなく、この展示会のために今回集められたこうした絵画などもこの展示会の魅力の一つです。
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筆/ヴェネチア 公認ガイド 田口やよい
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