ゴンドラ
ベネチアのもっとも驚嘆すべきものを一つあげるとしたら、ゴンドラだといっていいかもしれません。
水の上をまるで滑るように渡っていくこの船。もっともヴェネツィアらしいヴェニスを味わえるのが,この船の上。
ワーグナーは,もう朝に近い夜遅く,リアルトのあたりから聞こえてくる, まるで動物の胸の中からでてくるような、ゴンドリエレの『ホーイ』という声に感動して,しばらく呆然としたと、深い感動をこめたページを残しています。ジョージ サンドは,どんなに生活が困難になっても,ゴンドラだけは諦められないと書いています。ゴンドリエレが漕ぐこの船に乗って、サンドは夏の夜のヴェニスを回るのをこよなく愛しました。
彼らが滑っていったのは,今のような電光汚染の運河ではなく,暗い運河の中で,水の上で月の光が壊れるロマンチックな夜でした。
それでも,夏の夜遅く、ゴンドラに乗るとふと,サンドやワーグナーが見たようなヴェニスがあらわれる一角もあって、息をのみます。
また,サンドが愛したのが,ゴンドラの上での歌でした。サンドのヴェニスの恋人のパガニーニは医師でもありましたが、作曲家でもあり、サンドのためにもいくつかのロマンチックな歌を作曲しました。
歌い手にもよりますが,今でもゴンドラの上で歌われる曲には、この頃のものもあります。
ヴェニスの歌はやはりこのラグーナと運河を想像させる独特のリズムを持っていて,味わい深いものです。